何もしなければ、何も生まれない。

少々プライベートでバタバタしていた週末が終わり
（日曜日はイースターだったのに、今年は何も出来なかった）
４月を前にちょっとホッとしたところだったので、銀座松屋で開催中の
「ターシャ・テューダー展」を見てきました。

現在９２歳のターシャは恐らく、今世界で一番有名な絵本作家の１人。
日本ではガーデナーとしても多くの園芸愛好家の憧れの的と
なっています。

私がガーデナーのターシャを知ったのは１５．６年前。
絵本文庫を営んでいた母の知人が、一冊の写真集を貸してくれたのが
きっかけでした。…広大な敷地に所狭しと咲き誇る季節の花々。
あれだけ美しく咲いているのを見ると、手入れをしている人が
どれだけ愛情を込めて接しているのかが分かる気がしました。
その写真集が出た頃、ターシャは恐らく７０代後半。
あれだけの花を１人で手入れをするターシャの存在を知り、感嘆ながらも
何時しかそれは頭の奥へと追いやられていました。
しかし、ここ数年、空前のターシャブーム。あれよあれよと言う間に
絶版になっていた絵本が再版されたり、写真集が本屋で平積みに
なっていたりと目を見張るばかりでした。

さて、午後３時頃に松屋に着くと、そこは沢山の人。
そのほとんどが女性です。今回の展覧会は絵本作家としてのターシャの
日常がテーマとなっていました。
普段、ターシャがお茶の時間に使っているTeaSetやドレス、
絵本の原画が数多く展示されており、来場者はその一つ一つを
じっくり眺めていました。

中には手書きのお菓子のレシピも。
よく見ると、そのレシピには必ず「The　Best」と書かれています。
訳すと「最高に美味しい！」と言うことなのでしょう。
本来、人の目に触れるものでもないのに、それを書き添えるターシャの
人柄が滲み出ている気がしました。

会場を後にして、妙に賦に落ちない感がありました。それは多分
来場者の多くが「ターシャは凄い！」と彼女をとてつもなく高い場所へ引き上げて
しまっていること。
憧れや尊敬の念を持つ事は悪いわけではないのです。
家事と子育てと仕事、そしてあれだけの庭の手入れをこなしてきた
ターシャの生き方は、多くの女性に元気を与えているからこそ
これだけブームになっているのでしょう。
でも多分、ターシャは「自分が出来ること、やりたいことをその時
その時に選びベストを尽してきただけよ」とニッコリ笑いながら言いそうです。

ターシャの言葉を目にする度に、思い出すエピソードがあります。
雑貨店を営んでいる知人の話です。

ある日、お客様に「自分が気に入った雑貨に囲まれたお店の経営って
夢があって良いですね、羨ましいです。」と言われたそうです。
知人はすかさず
「私にも出来たのですから、お客様もチャレンジしてみては
如何ですか？」と答えると、そのお客様は
「私が？いえいえ、とんでもない！」と“到底無理です”と言った感じの
失笑を浮かべたと言います。
知人は「何故、やりもしないうちから無理と決めてしまうのかな。
始めなければ、何も起こらないのに。」と思ったのだそうです。
私もその話を聞いたときに「自ら可能性を潰すとは、何と勿体ない！」と
知人と同じ事を思いました。

ターシャは言います。
「若い人には、挫折や失敗、思い通りにいかないことがあっても
自信をなくしたり、悲観しないでと言いたいわ。
世の中は動いているんですもの、あきらめてしまったらそれまでよ。
それより、世の中にある良いこと、楽しいことを掴む努力をして欲しいわ。」
　《ターシャ・テューダーの言葉　～生きていることを楽しんで》

ターシャと同じく生きることは、彼女が歩んできた人生故に
出来るわけではありません。
でも「羨ましい」と言うだけで、その存在を遠くに置いてしまうのは
とても勿体ない気がします。

何においてもそうだと思うのですが、やりたいことを出来ることから
コツコツ始めるのが、後々大きな流れを作ったり、呼び込んだりする
様に思うのです。
ターシャはその見本のようなものです。
「やってみたい！」と思ったときが、何かが出来るチャンス。
…まずは初めの一歩を踏み出さなくっちゃ。